韓国籍の方の相続(相続欠格)
こんにちは、名古屋の事務所で弁護士をしています加藤です。
今回もまた前回の続きとして韓国籍の方の相続について説明したと思います。
今回は、韓国の相続法における相続欠格について説明したいと思います。
相続欠格とは、相続人となる地位のある人であったとしても、法律に定められた一定の事由が生じた場合には、相続することができないようにする制度のことです。
韓国では、大きく分けて2種類の欠格事由(相続権がはく奪される理由)があります。
①被相続人等を死なせようとするような行為をしたこと
たとえ、相続人であったとしても、被相続人に対し刑法に定められる「殺人」「殺人未遂」「傷害致死」といった行為をした場合は、欠格事由に当たり、相続権がはく奪されます。
行為によって、その被害者について範囲が異なります。
「殺人」と「殺人未遂」の場合の「被相続人等」とは、直系尊属、被相続人、その配偶者、相続の先順位や同順位にある者のことをいい、「傷害致死」の場合は、相続の先受遺や同順位の相続人は排除されます。
日本でも同様の欠格事由が定められていますが、その対象は「被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者」であって、殺人カ殺人未遂が対象行為になりますので、韓国における欠格事由の方が、客体も行為態様も日本より広いことになります。
一方で、日本の場合は、自分は上記のような行為をしていないとしても、被相続人が殺害されたと知りながらこれを告発しない場合、原則(行為者に是非の弁識能力がなかったり、その行為をした人が自己配偶者又は直系血族である場合は除かれます)、欠格事由に該当すると定められているため、日本の方が被相続人が害されることに寛容とは言えないでしょう。
②被相続人の遺言に関する不正行為
詐欺又は脅迫により被相続人の相続に関する遺言又は遺言の撤回を妨害したり、詐欺又は脅迫によって被相続人の相続に関する遺言をさせたり、遺言書を偽造・変造・破棄又は隠匿したりした場合には相続権がはく奪されます。
これらと同様の行為が欠格事由に該当することは、日本も同じですが、韓国と日本では遺言書におけるルールが異なる部分もありますので、全く同じ行為でも欠格事由に当たるかは判断が異なる場合があります。
韓国では基本的上記法律に定められたこれら事由によって法律上当然に相続権がはく奪されます。
これに対して、日本の場合はこうした当然にはく奪される相続欠格以外にも被相続人に対する重大な非行があった場合に被相続人が家庭裁判所への申立てを行うことで(生前でも遺言書に書いておくことで、死後遺言執行者によって申立を行うことも可能)、相続権をはく奪する「廃除」という相続権をはく奪する制度がありますが、韓国にはありません。
こうした相続欠格についての制度は国ごとの風習や価値観等によって異なるところですので、注意が必要です。
次回もまた、日本と韓国における相続の違いについて説明したいと思います。